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 日本衛生動物学会は戦後まもない1948年に発足し、カ、ハエ、ダニ、ネズミなど重要な感染症を媒介する衛生昆虫・動物、毒蛇、ハチ、ドクガなどの有毒動物、ゴキブリ、ユスリカなどの不快昆虫類などを対象に、様々な角度からの研究や知識の普及に努めてまいりました。

 我が国で1940年代から1960年代に流行していたマラリア、デング熱、フィラリア症、発疹チフス、現在でも流行が見られる日本脳炎などの感染症の防圧をはじめ、衛生昆虫類の防除を通じて環境衛生の向上に本学会は大きな貢献をして来ました。ところが、戦後の急速な復興にともなって環境衛生が著しく改善された結果、衛生動物対策はあまり重要視されなくなり、現在、大学や衛生研究所から関連の研究者が激減する事態を招いております。

 しかし現実には、ツツガムシ病、マダニが媒介する日本紅斑熱、ライム病、ダニ脳炎などの新興感染症が認められはじめ、家屋内のヒョウヒダニによるアレルギー疾患なども大きな問題になっております。都会のビル街ではクマネズミが増え、ドブネズミからはレピトスピラ症の病原体が検出されております。 また、地球規模での温暖化や物流の活発化によって媒介昆虫類の分布域の拡大が認められております。ここ10年ほどの間に本学会が係わってきた大きな話題として、医療機関等における疥癬の流行、保育園、小学校を中心としたアタマジラミ症の発生、イエバエからの腸管出血性大腸菌の検出、セアカゴケグモの大阪府下を中心とした侵入および分布域の拡大、オオクロバエからの高病原性鳥インフルエンザH5N1の分離、コロモジラミからの塹壕熱病原体の検出などがありました。また、疾病媒介昆虫類の殺虫剤抵抗性の分子機構、蚊のマラリア媒介能力に関係する分子の解析、遺伝子導入媒介昆虫の作成など新しい分野の仕事が若手・中堅の会員諸氏によって精力的に行われており、将来の媒介昆虫防除および感染症対策の基礎的な研究が進んでおります。

 1999年以降米国で流行している西ナイル熱は、主にイエカ類と野鳥との間で感染環が回っているウイルス病で、2008年末までに約2万9千人に迫る数の患者が発生し、約1130人が死亡しております。 我が国へ西ナイル熱ウイルスがいつ侵入しても不思議ではない状況と言われております。これらの事を考えますと、我が国での蚊類の発生状況調査、生態・生理学的解析、平常時からの幼虫防除対策の重要性は当然のこととして認識する必要性があります。

 本学会の会員諸氏の今後の研究の発展を期待しつつ、一般の方々にも常日頃から日本衛生動物学会の活動に興味を持っていただき、建設的なご意見をいただければ幸甚と思います。

日本衛生動物学会__
学会長__高木 正洋  
(2009.4.6.)

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